『自閉症の僕が飛びはねる理由』を読んだ感想 3つのポイント
はじめに
こんにちは。
作業療法士のらいごです。
皆さんは東田直樹氏が書いた『自閉症の僕が飛びはねる理由 会話のできない中学 生がつづる内なる心』を読んだことはありますか?
私はタイトルのみ見聞きしたことがある程度で、実際に手に取って読んだのはここ最近でした。
結論から申し上げると、この本は名著であると私は思います。
理由は2つあります。
まず何よりも1テーマが短く簡潔に書かれていて読みやすいということ。
もう1つは、重度の自閉症の方が見ている世界の具体例をよむことが出来ること。
この2点が挙げられます。
今回はそんな『自閉症の僕が飛びはねる理由』から学んだ点を3つに絞ってお話します。
私が学んだ3つのポイント
①どうして何度言っても分からないのですか?
以下、著書で東田氏はこのように記しています。
ー何度言っても分からないーよく僕たちはこう言われます。(中略)怒られてしまった時には、またやってしまったと後悔の気持ちでいっぱいですが、やっている時には前にしたことなどあまり思い浮かばずに、とにかく何かにせかされるようにそれをやらずにはいられないのです。(中略)分かっているのにやめられない僕たちですが、どうかこりないで下さい。みんなの助けが僕たちには必要なのです。
この文章を読んで私は、自閉症の方のアンビバレンツな感情を感じました。
現場で関わっている方々の中には、表情や声色では今の感情を推定しかねる方もいると感じています。何かいたずらをしてしまった場面で、こちらが注意をしても反省しているように見えなかったり、全く違う物に集中しているように見えることがあります。
それでも、本人の中で、実はやめたくてもやめられない葛藤のような感情もあるのかもしれない、と支援者側が考えることで、何かトラブルがあっても少しでも優しく対応できるきっかけになるかもしれませんね。
②あなたの話す言葉をよく聞いていればいいですか?
話せるということは、声を出せるということではありません。みんなは、そのことをちゃんとわかっていないように思います。(中略)声は出せても、言葉になっていたとしても、それがいつも自分の言いたかったこととは限らないのです。(中略)僕たちの話す言葉を信じ過ぎないで下さい。態度でも上手く気持ちを表現できないので難しいと思いますが、僕たちの心の中を分かって欲しいのです。
最近私が現場で働いていて思うのは、実は言葉を話すことが出来る自閉症の方の方が、対応が難しいのではないか?と言うことです。
こども達とはじめの挨拶をした際に「今日は○○をすることを楽しみにしてたもん!」と言ってくれた子と、いざ一緒に活動をしてみると、どうも楽しそうに作っているようには見られませんでした。空いた時間に改めて私が「今日は楽しかったかい?」と聞いてみると、その子は「うん・・・でも本当は別のことがしたかった」と話してくれたことがありました。
はじめに「楽しみにしてたもん!」と言う言葉は、間違って言ってしまったのか、もしくはパターン化した文言だったのかは、私はまだ分かりません。子供たちの気持ちを聞くことも大事ですが、その言葉は実はかなり曖昧で、間違って言ってしまったこともあるかもしれないので、行動と一緒に言葉を聞いてことが必要なのかなとも思いました。
➂視覚的なスケジュール表は必要ですか?
予定は予定であって決定ではないと分かっていますが、一度決まったことが守られないのが納得できないのです。(中略)それで落ち着くように見えても、実際はしばられているだけで、本人は全ての行動を決められている、ロボットみたいだと思うのです。
この文章は私が著書の中で最も考えさせられました。と言うのも、私が現場に入って数カ月経ったタイミングで、ふと(スケジュールって単にその人たちを縛ってしまう側面もあるのではないか?)と思いついたからです。しかし、他の職員がこども達にスケジュールを提示し上手く遊んでいるのを見て、私が(これで見通しを持って安心してくれるなら)と思い、かれこれ数年が経ちました。
東田氏は文章から察するに、かなり視覚的な情報が入りやすく、また『時計』と『やること』の結びつきをしっかり理解されているが故に、スケジュールに縛られてしまう感覚を持っていると感じました。
では東田氏のように、スケジュールで窮屈さを感じている方にどのように対応をしたら良いのか、ご本人はこのように記しています。
聞くだけだと、よく分かっていないように見られます。何度も同じことを質問するかもしれませんが、そのうち慣れて聞く回数も減って来ます。時間がかかることですが、僕はその方が本人にとっては楽だと思うのです。もちろん、手順や物についての説明、作り方などは、視覚的に絵や写真などを使って教えてもらった方が助かります。(後略)
もちろんスケジュールを提示することで見通しを持って安心して作業が出来る方がいるのは事実です。しかし、その中にはもしかしたらスケジュールによって肩身の狭さを感じている方がいるかもしれないことを、どうか忘れないで下さい。
おわりに
以上が私が学んだ3つのポイントでした。
前文にも記載しましたが、この本はとにかく読みやすく、1テーマを1~2ページ程度で読み進められます。
まだ読んでいない方は、ぜひ一度手に取って読んでみて下さい。
また、この本の続編もすでに出版されているとのことでしたので、近々図書館で借りて来ようかと思います。
何か気になった点や感想がありましたら、コメントにてご連絡を頂けると大変嬉しいです。よろしくお願いします。